社会人の方で「仕事で嫌なことがあった」「行きたくないな」といった感情を一度でも抱いたことがある方は少なくないのではないでしょうか?
いろいろなメディアで言われていることではありますが、現代社会が人に与えるストレスというのは非常に高いものがあり、精神的に追い込まれ、うつ病や適応障害といったメンタルヘルス不調に発展してしまう人も少なくなりません。
そうした中、うつ病や適応障害を発症した後、社会復帰を目指される方を対象にリワークプログラムというものが開発されました。
リワークプログラムというのは、通常雇用条件で復職を目指して就労するための医療プログラムのことで、return to work(リターン トゥ ワーク)の略です。
この記事では、
- 今精神的につらいけど病院にかかるのは不安だ
- メンタルヘルス不調が発症したけど社会復帰できるのだろうか
- リワークプログラムを進められたけど具体的にどうなのかよくわからない
という方を対象に、リワークプログラムがどのようなものなのかをわかりやすく解説します。
わたしも職場での軋轢から適応障害を発症し、リワークプログラムに参加した結果、自分のスキルを活かして社会復帰を果たすことができました。
当時は参加するまでとても悩みましたが、結果的に非常に意義があった、よかったと感じています。
同じように悩まれている方が、わたしからの経験談を参考に、社会復帰・職場復帰が実現できれば幸いです。
テスト記事3本目です。
内容は間違いがないようにしていますが、デザインや表現などはブラッシュアップしていく予定です。
ゆくゆくはWebライターの仕事を受ける際にこういう文章を書きますよというのを示すために使いたいと思っています。
今回は以前の自分の体験をもとにいろいろ調べて書いてみました。
文字数は8000字弱ですので、依頼内容によっては情報を減らしたり別記事にしたりして5000字程度のイメージでしょうか。
【就労継続率7割!】求職者増から生まれたリワークプログラム!
まずは現代におけるメンタルヘルス不調者の状況と、リワークプログラムの歴史から説明します。
厚生労働省によると、令和2年から4年の調査にかけて、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者の割合は0.4%から0.6%に増加1しました。
この数字は非常に少なく見えるかもしれませんが、同じ期間の日本の労働人口が約6900万人2であることを考えると、単純計算で3年間で約13万8000人も増えたことになります。
また、同じく厚生労働省の2022年の参考資料では、2002年から2017年の16年間で気分障害やストレス関連障害で通院されている人の数が約90万人増加した3との結果が出ています。
このようにメンタルヘルス不調で仕事が続けられなくなってしまうというのは、それほど珍しいことではなくなってきているのです。
そういった環境の中、1997年にNTT東日本関東病院の秋山 剛先生の下、職場復帰援助プログラムがスタートしました。
これをもとに2005年に五十嵐 良雄先生のメディカル虎ノ門でスタートされたリワークプログラムが全国に広まり、2008年にうつ病リワーク研究会が発足されました。
現在では日本うつ病リワーク協会として社団法人し、今までプログラムの開発・改良や利用実態調査はもちろん、復職後の予後調査に至るまでリワークプログラムの発展に尽くされてきました。
この日本うつ病リワーク協会理事長である五十嵐 良雄先生の施設では2003年の開設以来、15年間でプログラム利用者の3年就労継続率が約7割4とのことです。
これは同施設でプログラムを利用しなかった人の3年就労継続率が約2割であることと比較すると、非常に大きな効果があるプログラムであるといえます。
リワークプログラムの目的は「再発しないで仕事を続けること」
このように非常に効果が高いリワークプログラムですが、その効果の秘密のひとつに目標設定があるとわたしは考えています。
通常、ケガでも病気でも仕事を休むことになった人は「早く仕事に復帰したい」と思ってリハビリなどに取り組むのではないでしょうか?
ケガや病気の場合は、今どのような状態なのかが比較的わかりやすく、仕事への意欲というのは変わらず持っているでしょうから状態の解消と復帰が目標といっても差し支えないと思います。
一方、メンタルヘルス不調の場合はそうではありません。メンタルヘルス不調は内面の問題であり、その瞬間の環境・状況によっても症状・状態が変わってしまいます。
そのため、今どのような状態なのかは診察だけではわかりづらく、本人ですら状態の把握が難しいことが珍しくありません。
そのため、「早く仕事に復帰しよう」を目標にしてしまうと、上で書いたように3年後仕事を続けている人は約2割しかいないということになってしまいます。
そのためリワークプログラムでは「再発しないで仕事を続けること」が目標として設定されています。
これは復職よりも遠くに目標を設定するということですので、実際に復職するまでの期間も長くなってしまうという欠点もあります。
しかし、無理を押して復職しても再休職する可能性は高く、さらに休職の回数が増えるほど再発率や休職期間が長くなっていく傾向があるとされています。
最初の復職までの期間が少々長引いたとしても、復職・休職の悪循環にはまってしまうよりはよほどいいのではないでしょうか。
リワークプログラムの3つのメリット
「再発しないで仕事を続けること」を目標とするリワークプログラムですが、これに参加することにはどういったメリットがあるのでしょうか?
わたしが体験したり調べたりしたところによると、メリットは次の3つに集約されます。
- 自分の弱い部分との向き合い方・付き合い方がわかる
- 職場で必要なレベルまで回復ができる
- 適切なペースの治療と正しい服飾の時期を判断できる
ひとつひとつどういうことかを詳しく説明していきます。
自分の弱い部分との向き合い方・付き合い方がわかる
人にはいろいろなことに得手不得手があります。それは運動だったり勉強だったり、気温の暑い寒いにさえ得意不得意はあります。
それはメンタルヘルス不調を発症した原因についても例外ではありません。
人付き合いが苦手だったり、他人からの心ない一言に耐えることが苦手だったり、わたしも含めそういった何か苦手なことがあったがゆえに休職することになったのだと思います。
これは決して悪いことではありません。
しかし職場にはそういった「休職に至った原因」がそのまま残っていますし、その環境を変えようというのも簡単ではありません。中にはわたしのように環境を変えようと抗った結果自分自身の心が折れてしまったという方もいらっしゃるかと思います。
そのため、再発を防ぐためには「自分が苦手なこと」に向き合い上手に付き合っていくしかありません。
リワークプログラムは「自分が苦手なこと」に向き合うために、心理教育と自己分析、定期的な面談などで自己理解を深めるような内容になっています。
心理教育では、病気や治療についての一般的な知識を学んだり、スタッフやほかの参加者と対話をしたりして自己理解を深めていきます。他人と話すことで今まで見えていなかった自分自身が見えることもあるということです。
また、プログラムの随所随所で自己理解を促すような作りになっていて、プログラムへの参加自体が心理教育ということもできます。
自己分析についてはBDI(Beck Depression Inventory/ベックうつ病調査表)や日々の活動記録表などを用いて自分の状態を客観的に把握できるようにするほか、心理教育を通じて自分の周囲の環境にどんな問題があったかを認識し、内省を深めていきます。
この内省という言葉はプログラムでたびたび出てくる言葉ですが、自分のどこが悪かったのかということに目を向ける反省とは違い、自分はどういった人間なのか、何が苦手で何が得意なのかに目を向けることを言います。
定期的な面談はスタッフと会話をすることで今の状況の把握や自己理解の手助けを行なってもらいます。
当然プログラムの参加中であっても治療中であるわけですから、つらいことも出てきます。そういった相談も親身に受け止めてもらえ、客観的に話をしてもらうことができます。
こうした自己分析・自己理解や客観的な評価を受けながら自分の弱い部分との向き合い方・付き合い方を学んでいきます。
職場で必要なレベルまで回復ができる
わたしも発症当時はなかなか気づかなかったことですが、家の中で生活ができるレベルの回復と職場で必要なレベルの回復では圧倒的に後者のレベルが高いです。
わたしの場合、家の中で生活ができるレベルに回復したのは休職してから約1か月半後のことでしたが、その段階ではまだまだ職場に復帰できるような状態ではありませんでした。
具体的にはひどいときですと1日20時間とか寝込んでいたこともあるのですが、少し良くなっても就寝起床の時間が一定せず、集中力も体力も長続きしない、周囲に人がいると緊張してしまってさらに集中できなくなるといった状態でした。
そのような状態でも、家の中では生活できてしまいます。
しかし職場ではそうもいかず、同じ時間に起きて会社に行き、一定時間高い集中力や体力を要求されます。
リワークプログラムにはそういった問題を解決するために、オフィスワークや軽い運動の時間が設けられており、様々な場面でグループワークを行ないます。
オフィスワークではパソコンなどを使って書籍の要約を行なったり、自分が興味を持っていることを3分程度で話せるようにまとめてみたりします。
周りに人がいる仕事に近い環境で時間を決めて行なうことで、集中力や考える力などを整えることができます。
また、リワークプログラムは毎日決まった時間に始まり、決まった時間に終わります。
わたしの場合、最初は週2日からスタートしましたが、決められた時間に起きることも最初は非常に体力を使ったことを覚えています。
起きることもプログラムの一環なのだということを痛感させられました。
上に出てきた日々の活動記録表はプログラムのない日も使用しますので、普段の自分の生活リズムが客観的にわかるようになります。
体力に関することでは軽いスポーツや散歩などがプログラムに含まれています。
私が参加していた施設では毎日朝礼があり、その中でラジオ体操の時間があります。
学生時代には体育の時間には毎回やっていたように思いますが、準備運動程度のラジオ体操であってもなかなか思うように体が動かなくなっていることを感じさせられました。
まずはこういう体操レベルからのスタートではありますが、やはり復職のためには非常に重要なことのひとつでした。
グループワークは、例えば朝礼の当番は参加者が順番に行ないますし、心理教育や認知行動療法、アサーショントレーニングなどすべてにグループワークがあります。
プログラム参加者は複数いますので、その中で過ごすこと自体がグループワークともいえるかもしれません。
認知行動療法ではネガティブに陥りがちな考え方をポジティブに変える方法を学びます。
アサーショントレーニングは自己表現・自己主張の練習です。
アサーションについて詳しく記事を書くことがあればそこで説明しますが、自他ともに正しい自己主張をする練習という感じです。
これらの中で、自分の思考の柔軟性を鍛え、対人関係の作り方を技能として習得していきます。
さらっと書きましたが、こういう思考の柔軟性や対人関係の作り方もすべて「技能」であるということがプログラムを通して理解できます。
もちろん技能である以上簡単に身につくものばかりではありませんが、頑張れば身につけることができるというのはわたしの中では驚きのひとつでした。
こういった、ストレスがかかるような状況でも仕事が継続できる能力を復職準備性といいますが、プログラムの中でこの復職準備性をきちんと整えていきます。
適切なペースの治療と正しい服飾の時期を判断できる
わたしは休職後半月程度でリワークプログラムに参加しましたが、最初の1か月ほどは体調がすぐれず、週0~1回の参加にとどまっていました。
参加した当初は「早く復職しなければ」という気持ちが非常に強く、むりやり参加した部分もあるのですが、正直時期尚早であったと思います。
参加時期はいわゆる安定期といわれる時期に入ってからがいいとされています。
十分に休んだ後、ある程度行動ができるようになった状態です。
わたしの場合ですと、「何も考えられず何もできない」→「疲れて何もできない」→「何かするととても疲れる」→「何かしようと思うと面倒に感じる」という形で体調が変化してきました。
この「何かしようと思うと面倒に感じる」ようになってからようやく週2回程度の参加ができ始めましたので、「何かしようと思うと面倒に感じる」ラインが安定期といわれるのだと思います。
ただ、メンタルヘルス不調はやはり病気ですので、自己判断で行動するとタイミングが遅すぎたり無理をして症状が逆戻りしてしまったりすると思いますので、参加時期は主治医にしっかりと相談することが重要です。
さて、リワークプログラムでは適切なペースでの治療のために、普段の主治医の診察以外にスタッフとの面談を行いながら進めていきます。わたしの場合は、そのほかにカウンセリングも入れて3本柱で進めていました。
人は相手によって見せる一面が違うといわれますので、3つの側面から見てもらっていたということなのでしょう。
メリットで挙げた最初の2つは、いうなれば自己分析しつつ仕事と似た負荷をかけて訓練をするということでもあります。
ともすると自己分析で自己嫌悪に陥り、負荷過多となって悪化してしまうようにも思いますが、スタッフとの面談があるからこそ悪いサイクルに入ることなく、個人個人にあったペースで治療を行なうことができます。
また、プログラムは診察室ではなく、仕事に似た環境で行われることを考えると、ストレスが実際にかかっている状態の自分を見てもらえ、適切な治療を行なってもらえるということでもあります。
2週間に1回、復職準備性評価シートというツールを使って客観的にも判断してもらえますので、いざ復職となった場合にも本人・主治医・職場・産業医のいずれもが客観的な情報をもとに正しい復職時期を判断することができます。
リワークプログラムの3つの注意点
リワークプログラムは上に書いてきたようにとても効果があるプログラムです。
しかしそれがゆえに注意点もいくつかありますので、参加を検討される方は事前に主治医にしっかりと確認しておく必要があります。
- 病気の種類や症状、状態による向き不向きがある
- 福祉的就労を実現することとは支援内容が一致しない場合がある
- 主体的に参加することが重要
詳しく見ていきましょう。
病気の種類や症状、状態による向き不向きがある
リワークプログラムの対象者は、気分障害の方や気分障害と不安障害を併発している方とされています。
そのため、メンタルヘルス不調の種類や症状によっては他の治療プログラムの方がふさわしい場合があります。
いうなれば、同じ腹痛でも胃炎と腸炎では原因も対処法も違うようなものです。自分にふさわしい治療を受けるのが一番ですので、必ずしもリワークプログラムが当てはまるというわけではありません。
また、参加するタイミングはいわゆる安定期に入ってからが良いとされています。
もちろん人によりけりなことではありますので、ここについてもしっかり主治医と相談したうえで、主治医がいいというタイミングで参加するべきです。
慌ててもいいことはないというのはわたしが身をもって体験しました。
福祉的就労を実現することとは支援内容が一致しない場合がある
日本うつ病リワーク協会の理事長挨拶には以下のようなことが書かれています。5
- 通常雇用と障害者雇用とは就労条件が大きく違うので、支援の内容は当然変わります
- 医療リワークと福祉リワークは目的も方法も異なるい別種類の活動
当然といえば当然ですが、目的を達成するためにはその目的にあった手段をとるべきですよね。
障害者雇用自体非常に重要なものですし、それはそれで発展させていくべきものだとは思いますが、今回この記事で取り上げているリワークプログラムは冒頭でも書いたように「通常雇用条件で復職を目指して就労するための医療プログラム」です。
主治医と相談した結果、障害者雇用を目指した方がよいとなった場合は、それにふさわしいプログラムを紹介してもらった方がいいでしょう。
主体的に参加することが重要
このプログラムで対象になっている気分障害は「自分自身の心の中にあるもの」です。
もちろんそれはホルモンバランスの変調が大元の原因だったり、また気分障害が原因で身体的な不調が出てきたりすることもあります。
そこを薬である程度補助したりすることは可能ですが、最終的には自分に向き合い、内省し自己理解を深められるのは自分しかいません。
そのため、プログラムでは主体的に参加することが重要となってきます。
スタッフも周りにはいますが、プログラムの中のことをすべてしてもらえるわけではありません。
もちろん相談はいつでも受け付けてもらえますが、プログラム自体がグループワークみたいなものですので、この中で人間関係を作り、積極的に参加することプログラムの要となります。
わたしもそうでしたが、もちろん最初からすべてうまくいくとは限りませんし、体調がすぐれずなかなか主体的になれないこともあると思います。
無理をする必要はありませんが、無理のない範囲で主体的に取り組むようにしましょう。
リワークプログラムにかかる費用や参加場所
最後にプログラムの参加にかかる費用や参加できる場所について触れておきます。
休職中であったり退職していたりなどで特に費用面はわたしもすごく気にした部分です。
最終的には主治医に確認すべきことではありますので、参考程度に見てください。
まず費用は1か月1万円前後といわれています。
私がかつて参加した施設では1日昼食付で800数十円でした。あとはそこまでの交通費ですね。
また、わたしはプログラムの参加にあたり、主治医より「自立支援医療(精神通院医療)」を進められました。この制度を利用すると、特定の病院及び薬局でかかる費用が1割負担となり、月額上限が設定されます。
これにはリワークプログラム以外の定期的な診察や投薬も含まれます。(ただし精神通院医療に限る)
わたしの場合は月額上限は1万円でしたが、これは市町村民税の支払額により変わるようです。詳しくは各市町村役場へ問い合わせてみてください。
次に参加場所ですが、日本全国の日本うつ病リワーク協会所属の医療機関で参加できます。6
その他の医療機関や公的機関でもリワークプログラムというものを設定しているところもありますが、その場合、今回紹介したような内容ではないことがありますので、事前にしっかりと確認をしておく必要があります。
まだまだ数が豊富あるというわけではありませんので、ぜひこのプログラムが広がっていってほしいと思います。
【リワークプログラム】まとめ【復職を目指すみなさんのために!】
実はこの記事はわたしが参加前に知りたかった内容をまとめたものでもあります。
特に精神的に落ち込んでいる場合、新しいことを始めるのはとても心配で勇気が必要ですよね。
リワークプログラムというのは、「再発しないで仕事を続けること」を目標とした「3年就労継続率約7割」の実績がある医療プログラムです。
「病気の種類や症状、状態による向き不向き」があったり「主体的に参加することが重要」だったりと注意点はありますが、実際にわたしは見事に社会復帰を果たしています。
参加していた当時は大変だったこともありましたし、体調も進んで戻ってという繰り返しでしたが、今となっては参加してよかったと非常に意義を感じています。
「職場で必要なレベルまで回復」するためにも、慌てずしっかりと「適切なペースの治療」を受けていきましょう!
- 厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」による ↩︎
- 総務省統計局「労働力調査(基本集計2022年(例話4年)平均結果の概要」による ↩︎
- 厚生労働省「第13回 地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会 参考資料」による ↩︎
- Indeed「メンタル不調で社員が給食、復帰後の再給食を防ぐ「リワークプログラム」とは?」による ↩︎
- 日本うつ病リワーク協会ホームページによる ↩︎
- 日本うつ病リワーク協会ホームページによる ↩︎
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